
ネット上で不特定多数の人たちからプロジェクトを進行するための資金を集める新しい金融の仕組みとして、最近何かと話題なクラウドファンディング。
特に日本では、資金を提供するかわりにリターンとしてサービスや物を贈る購入型クラウドファンディングの割合が高いと思います。有名なところではキングコング西野亮廣さんの「えんとつ町のプペル」プロジェクト、別府大分の「湯~園地」プロジェクトなど、一度は聞いたことのある人が多いのではないでしょうか。
クラウドファンディングは、先の東日本大震災での寄付型の普及や、芸能人が参加しはじめたことで一気に知名度をあげました。今まで良いアイディアをもっていても資金面の問題でプロジェクトを成し遂げられなかった人たちにとって、高いリスクを持たずに資金を集められるという仕組みは画期的なものだったはずです。
このような背景から広く認知されているクラウドファンディングですが、中には否定的な意見を持つ人たちもいることをご存知でしょうか。今回は、なぜそのような否定的な意見が出てくるのかについて考えてみようと思います。
この記事の目次
クラウドファンディングの否定的な意見
では、実際にツイッターで見つけた意見を見てみましょう。クラウドファンディングって要は乞食だよね。金くれたらちょっと踊ってみせるよって言うレベルの乞食みたいな行為だよね。カタカナで言ったら負い目が減った気になってるみたいだけど乞食だよね。恥ずかしいよね。
— ちらうら (@chiraura_xxx) 2017年11月1日
クラウドファンディングで資金集めって手法が流行った結果乞食まがいの行いがまかり通るようになってしまったな
— ルなんとか (@A_kinn0suKe) 2017年11月1日
クラウドファンディングの捉え方間違えている人って乞食みたいだなーって思った。あれが欲しい、どこどこに行きたい、だからみんなお金ちょーだい!って自分でしっかり働きなよ…自立しようよ。って思う(゜-゜)(。_。)なんかモヤモヤ~ん。
— ちゃんりー (@chanlee027) 2017年10月30日
一言で言うと、クラウドファンディングは、乞食みたいで貧乏臭くて見っともなくて嫌いだ。何も結果出してない奴が人から投資して貰おうなんて虫が良すぎる。まずは、自腹切ってリスク背負って、胸を張れる自分の作品作って、少しでも結果を出してからやれ!
— タカタイチロー (@takataichiro) 2017年8月31日
一番多い意見は「クラウドファンディングはお金を無心する乞食である」という意見です。そのほかにも、「自分で働いて稼いだ方が良い」「親に頼ればいい」「自分で資金を集められないなんて覚悟がたりない」などという厳しい意見も多くあります。
しかし、何かを始めようとするときには必ず批判する人たちが出てくるものです。批判するユーザーが存在しているからといって、システムそのものが悪いというわけではありません。しかし、「何となく気に入らない」ならまだしも、批判するからには何かしらの理由があるはずですよね。
確かに、クラウドファンディングはその手軽さから「商品が届かない」などの詐欺が起きる可能性は捨てきれません。しかし、それとは別に、実際には大きな問題を起こしていないにもかかわらず、クラウドファンディングで炎上してしまった事例も少なくありません。
では、実際にこれまでクラウドファンディングで炎上した例を見てみましょう。
クラウドファンディングで炎上した例
女子大生の「夢バトン」プロジェクト

有名な事例で言うと、女子大生による「夢バトン」プロジェクトです。
これは、ある女子大生がスケッチブックを持って世界中を旅し、発展途上国の子供たちに自分の夢を描いてもらって夢のバトンを繋げる、というものでした。
内容だけを見ればとても良いプロジェクトに思えますが、その募集金額にカメラ代、生活費などのプロジェクト内容に関係ない支出が含まれていたため、「自己満足で旅行がしたいだけでは」という批判が集まり、最終的にプロジェクトは中止されたのです。
ファッションYouTuberげんじ氏のブランド設立プロジェクト

これは、YouTubeで自身のファッションやコーディネートを発信し人気のあった「げんじ」氏が、自らのブランドを立ち上げる際にクラウドファンディングを利用したプロジェクト。
目標金額を大幅に超えた資金調達を達成しましたが、ブランドイメージとして発表したデザイン画が既存のブランドのカタログと似通っており、「模写(転用)したものでないか」という疑惑から炎上しました。
また、リターンに設定していたHPへの掲載権利を、HP権利者側に無許可で設定していたことも炎上の理由の一つに挙げられるでしょう。
「真木よう子」フォトマガジン出版プロジェクト

これは、女優の真木よう子さんが企画した「真木よう子、フォトマガジン出版プロジェクト」です。出版社を通さずにファンと一緒に写真集を作り、東京ビックサイトで行われる同人即売会「コミックマーケット93」で販売しようという取り組みでした。
コミックマーケットとは世界最大規模の同人誌即売会で、同人誌(自費出版本)を配布したり、コスプレを行ういわばオタクの祭典です。同人誌を販売する側(サークル)は抽選で選ばれますが、今年8月には叶姉妹がサークルとして参加したことで一般への認知度が高まったように思います。
真木よう子さんはまだ抽選が行われていない段階から自らの出版社をコミックマーケットで配布することを発表したことや、コミックマーケットで自費出版ではない物を売ること、また多くの参加者が一堂に会するコミックマーケットを「自身とファンとの交流場」として考えていた部分から非難を浴び、プロジェクトの中止が発表されました。
追記:炎上は続く…?クラウド出産ファンディング

そして、今最も注目を浴びたのが「クラウド出産ファンディング」でしょう。
これは発表には至りませんでしたが、プロジェクト主である大学生ブロガーのイシイ氏(@ishiko_141)が、生まれてくる子どものための出産費用をクラウドファンディングで集めるというもの。
学生結婚をしたイシイ氏の就職までの半年間に必要な出産費用を集めたいという取り組みですが、現在非常に厳しい意見が飛び交っており、中には強い嫌悪感を示すアカウントも出てくるほど。
クラウド出産ファンディングしてますとかいう人のツイート回ってきてチラ見したんだけど、うっかり妊娠で出産決意したのはいいけど出産費用にいくらかかるのかとかそういうことも知らずにただ費用集めようとしていて、なんか他力本願感すごい。就職も決まってるらしいし自立してくれ
— タビトラ (@tabitora1013) 2017年11月2日
クラウド出産ファンディングって必然性を感じないんですよね。
本当に出産費用がないなら、親のすねをかじれよ…としか思えない。 後から出産育児一時金で返済できるわけですし。 — ウェブシュフ (@web_shufu) 2017年11月1日
クラウド出産ファンディングかー 誰に迷惑をかけるでもないし、クラウドファンディングの社会実験として見ればアリなんじゃないかな 30万くらいなら金が借り余ってる暇な金持ちかポンと出してくれそうな気もする 目標額達成した場合のリターンが少し気になるけど面倒で見てない
— msi5005 (@arex5005) 2017年11月2日
実は2013年にも同じように出産資金をツイッターで募るアカウントが表れ、数人からの入金がされたのち、あまりの非難に耐えきれなくなったのか姿を消したという事態が発生しています。その結末から「新手の詐欺だったのか」という声もささやかれているので、今回のプロジェクトがどのような結果になるか興味深いところでした。
しかし、このイシイさんのプロジェクトはCAMPFIREの審査に落ちたことで失敗という結果に。
純粋にプロジェクトの内容だけを見れば、子どもが生まれる家族に気軽にお祝い金を送る・支援ができるという流れを作れる画期的なプロジェクトになる予感もありましたが、いかんせんプロジェクト主であるイシイさんの失言が目立ったように感じます。また、リターンが必要な購入型クラウドファンディングを選ぶ必要はなかったように感じる方も多かったのではないでしょうか。
様々な人を巻き込んだこのプロジェクトはある意味でクラウドファンディング界に一石を投じたといえるかもしれません。やはり、このような気軽に金銭のやり取りができるツールは「何をやるか」という前提に「誰が・どのような人がやるか」という問題が大きいように感じました。
結果的にイシイさんはツイッターを辞め、ユーチューブにて出産や自身のその後を発信するように。
また、無事お子さんも生まれ、内定をもらっていた会社で正社員として働いているそうです。
ちなみに、リターンの無い完全な支援になる寄付型クラウドファンディングというものもあるので、今後の参考にチェックしてみるのも良いかもしれません。
このように見てみると、詐欺などの金銭的ではない部分が問題視され炎上、結果的にプロジェクトが中止されるという事態が多いように思います。特に有名人が行ったプロジェクトが炎上すると、「やはりクラウドファンディングは良くない仕組みだ」と思う人が出てきてもおかしくありません。
しかし、管理人の個人的な意見としては、げんじ氏のプロジェクトは別として、日本ではやはり人のために役立つ・人を楽しませるプロジェクトが優遇される傾向にあり、「自分本位のプロジェクト」は嫌煙されているように思います。
そして、そのようなプロジェクトが「クラウドファンディングは乞食である」という認識を呼んでいるのではないでしょうか。
自分本位のプロジェクトが多すぎる!?

管理人は融資型クラウドファンディングだけでなく、購入型クラウドファンディング運営会社もよく見に行っています。しかし、そこで気になるのは「自分本位で資金集めする人が多いのでは」という点です。
たとえば、購入型クラウドファンディング運営サイトであるCAMPFIREを見ていると、資金が集まらず終了を迎えるプロジェクトが思ったより多いことに驚くと思います。
もちろん、プロジェクトが成立できなかったのには、知名度が足りなかったり、上手くアプローチが出来なかったりと言った様々な理由があるので一概には言えません。しかし、一部にはあきらかに自分本位での資金集めの面が目立つプロジェクトがあるのも事実です。


これらは極端な例ですが、プロジェクトの目標が自分本位のものであると、やはり支持者を集められずに終わってしまうパターンが多い気がします。このようなプロジェクトを見てしまうと、確かに「努力もせずにお金だけ無心している」というように見られてもおかしくないのではないでしょうか。
このように言うと、「そもそもクラウドファンディングは不特定多数からお金を集めるシステムだから好きにしたら良いのでは?」という意見が出てくるかもしれませんね。もしもクラウドファンディングをただの資金集めとしか考えていない方がいたら、それはとても勿体ないことだと思います。
クラウドファンディングで資金を集める意味とは?
では、クラウドファンディングはただの資金集めではないというのはどのような意味でしょうか。ツイッターで興味深い意見を見つけました。
ちなみに私は、個展の費用数十万をクラウドファンディングで支援募るのもいいと思ってる。それくらい自分で稼げって意見もあるけど、要は、額はなんであれ応援したくなる要素を持ち合わせてるかどうかだと思う。 発表する形は自由だし、特に今の時代、こういうのどんどん活用していいよね。
— 門川洋子 (@pino_pinocolina) 2017年10月26日
まさにこの通りで、要はプロジェクト主にどれだけ信頼を寄せているか、期待を寄せているかが数値で表れた結果が資金という形であると考えられます。
不特定多数から資金を集める方法なので、もちろん知名度は大切です。しかし、いくら知名度があっても、自分が全く興味のない人に大事なお金を渡そうとは思いませんよね。そこで大事なのが、「この人にお金を渡したらどれだけ楽しませてもらえるだろうか」という考えです。だからこそ、多くのクラウドファンディングの場合は支援者が欲しがるであろう商品やサービスをリターンとして設定していますよね。
たとえば媒体は変わりますが、CAMPFIREのサービスには小規模なクラウドファンディングができるpolcaというアプリがあります。以前、それを使用してキングコング西野亮廣さんが「新宿~五反田までの電車賃をカンパしてもらう」という企画を立ち上げました。その企画は最終的にpolcaの規約違反として白紙になりましたが、目標金額300円のところを128,700円まで集めることに成功しています。
このことからわかるのは、カンパをした人たちはプロジェクトの内容にかかわらず、「この人にお金を渡したら何かおもしろいことをしてくれるだろう」という気持ちでお金を出しているということです。
もちろん西野さんは知名度もありますし、「えんとつ町のプペル」プロジェクトの実績もあるでしょう。しかしそれ以上に、西野さんのファンであり、西野さんが今後起こしてくれるアクションを心待ちにしているのです。
クラウドファンディングは信頼でお金を買う行為!

「クラウドファンディングは信頼でお金を買う行為である」という意見もあります。今まで積み上げてきた信頼を元に、支援者からお金を募るのです。支援者の金額に見合わない結果であれば、当然信頼は無くなってしまいます。
逆に言えば、信頼の無い相手にはお金を出そうと思わないということ。たとえばさきほどの「クラウド出産ファンディング」の場合、倫理はどうであれ、リターンがもっと魅力的、ユニークな物であれば、または誰でも知っている芸能人・有名ブロガーなどであれば、結果は違っていたかもしれません。
クラウドファンディングはある種のエンターテインメント

クラウドファンディングを深く掘り下げていくと、融資型、寄付型など、様々な種類があります。そのためすべてのクラウドファンディングがそうであるとは言えませんが、購入型クラウドファンディング、特に個人がプロジェクト主として行う場合、ある種のエンターテインメント性を持っているといえるのではないでしょうか。
たとえば、新しくお店をオープンしたい、商品開発をしたいというプロジェクトに「銀行の融資を受ければいい」という声があるのも事実です。しかし、銀行融資だけでは、その企業と銀行だけで完結してしまいますよね。
そこでクラウドファンディングを利用し拡散することによって、そのプロジェクトを見た支援者が興味を持ち、支援したり、情報を拡散することによってプロジェクトの輪が広がっていきます。
支援をする=お金を出すことで、そのプロジェクトの先行きを見守ってくれる方が増えたり、サービスを利用したり、SNSを通じて多くの人と共有したり、クラウドファンディング終了後も人と人とのつながりが続いていくのです。それこそが、クラウドファンディングの大きな魅力であると考えます。
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