
投資家にとって、未上場ベンチャー企業への投資は大きな魅力を感じるかと思います。
今後どうなるかわからないリスクを持ちつつ、IPOを果たしたときは、大きなキャピタルゲインを得る可能性も秘めている。まさにハイリスクハイリターンの世界ですが、こういった投資に魅力を感じる方も多くいらっしゃるでしょう。
しかし、未上場の企業への投資は、上場企業への投資に比べハードルが高いのが一般的です。上場企業のように公開されているわけではないため、市場を通じて購入することはできませんし、ベンチャー企業に直接問い合わせて購入を打診したとしても、実際投資をする際の契約など色々と問題もあります。
そんな中、今注目を集めているのが株式型クラウドファンディングサービスです。株式型クラウドファンディングサービスは、一般投資家が未上場のベンチャー企業へ投資しやすくなるようにできたスキームといえます。これにより、従来よりも未上場企業への投資が負担なく出来るようになるのです。
それではどのようなサービスか、詳細を見ていきましょう。
この記事の目次
株式型クラウドファンディングとは?

“株式投資”と聞くとみなさんも馴染みがあるかもしれませんが、クラウドファンディングと聞くとちょっと聞き慣れない言葉になるかと思います。そこで、まずクラウドファンディングについて説明します。クラウドファンディングとは、運営主体が小額の費用を投資家から集め、その集めた資金を投資に回すことです。
未上場ベンチャーへの投資は、通常1人の投資家ないしは機関投資家がリスクを取って投資します。一方、クラウドファンディングだと、多数の投資家から金額を集めることになるので、その分リスクを低減することができます。また、投資家の方も小額からスタートできるので、リスクを抑えて憧れの未上場企業へ投資ができます。
このクラウドファンディングの仕組みは、株式投資だけでなく、多くの分野で用いられています。例えば、太陽光発電投資を始めるにあたり、その設置費用やメンテナンス費用をクラウドファンディングで集めたり、また何かイベントを行う際に、クラウドファンディングを行っている会社を通じて資金を調達し、様々な プロジェクトを行うケースもあります。
このように、クラウドファンディングは新たな資金調達方法として、今後さらに注目を集めることが予想されます。
株式型クラウドファンディングのメリット・デメリットは?
それでは、株式型クラウドファンディングのメリットとデメリットについて説明しましょう。皆さんの大事な投資資金の運用に関わるので、始めるにあたっては、小額だったとしても、この2つの側面をしっかり押さえることをおすすめします。それでは、メリットから見ていきましょう。
株式型クラウドファンディングのメリット

まずメリットとして挙げられるのが、繰り返し部分になりますが、未上場のベンチャー企業への投資のハードルが低くなったことです。
未来のアップルやFacebook、アマゾンなどに投資ができると考えると、投資家マインドが湧き立つ方もきっといらっしゃるでしょう。
ベンチャーへの投資によって、未来の産業を育てるとともに、社会構造を大きく変え、わたし達の生活をガラッと変える可能性を秘めています。
そこに、自分が投資することにより貢献できることを考えると、成功した時のリターン以上の価値を感じられる方もいらっしゃるでしょう。
このように、リターン以外のところに大きな魅力を感じることができるのも大きなメリットになります。
- 未上場企業への投資ハードルが下がる
- 将来的に上場すればハイリターンを得られる
- 融資型、ファンド型と比較して高い利益を狙う事が可能
- 会社の成長を楽しむ事が出来る
- エンジェル税制の対象となる場合がある
株式型クラウドファンディングのデメリット

一方、株式投資型クラウドファンディングのデメリットは何でしょうか。
やはり、一番大きいのはリスクの高さです。未上場のベンチャー企業であるため、財務状況の把握ができなかったり、また会社としての体制が整っておらず、業務が思うように遂行されないこともあります。
これは、スタートアップしたばかりの企業であれば、どんな会社にもあることです。
今では 当たり前のように業務を行っている大企業も、昔はこのような混乱期を経て、今があります。このような中で、大成功する企業もあれば、倒産する企業もあります。
そして、倒産に終わった際には、皆さんが投資した金額は手元に戻ってきません。このことを十分に念頭に置いて 投資の判断を行ってください。
- 利益になりにくい(ハイリスク)なため利益化が難しい
- 上場企業の様な売却は不可。売却はできても企業の関係者から構成される「投資グループ」のメンバー内に限られる
- 換金性が低く、未上場企業なため価値がゼロに近い
- 企業が倒産すれば損失になるため目利きが必要になる
- 投資(資産を増やしたい)という投資家のニーズには合わない。企業を応援したいというニュアンスの方が強い
追記:株式型クラウドファンディング運営会社を紹介!
それではここで、株式型クラウドファンディング運営会社を紹介しておきましょう。2018年1月現在、国内の株式型クラウドファンディング運営会社は全部で3社あります。
FUNDINNO(ファンディーノ

日本クラウドキャピタルが運営しているFUNDINNO(ファンディーノ)は、今ある株式型クラウドファンディング業者の中では一番古い会社となっています。
IPO(新規公開株)を目指す中小・ベンチャー企業に投資できるのと同時に、FUNDINNO上で投資家同士の交流ができるのが特徴です。
最近では、サバ専門外食チェーンとして有名な「SABER」の代表者、右田孝宣さんのIoT×ドローン養殖で壊滅状態の日本の漁業の復活を目指す「株式会社クラウド漁業」が登場しました。
このプロジェクトでは目標募集額2,000万円のところ、上限募集額である3,800万円まで資金があつまり、その注目度が伺えます。
また株式会社クラウド漁業では2023年以降のIPOを狙っているとのことなので、少なくとも6年以上のスパンを必要としているのがわかるでしょう。
このように、株式型クラウドファンディングではある程度の長期保有を前提としていることと、IPO等が保証されているわけでもありません。あくまでも「気に入ったベンチャー企業へ出資する」という面を理解しておくのが重要になりますね。
GoAngel(ご縁ジェル)

2017年9月に登場したGoAngel(ご縁ジェル)はDANベンチャーキャピタル株式会社が運営する株式型クラウドファンディング運営会社です。
なんとGoAngelの代表取締役社長である出縄良人氏は、ディーブレイン証券(現:日本クラウド証券)を設立したという経歴があります。
日本クラウド証券といえば融資型クラウドファンディング運営会社であるクラウドバンクの運営会社であり、グリーンシート銘柄を取り扱っていた会社です。
しかもこのグリーンシートを利用した企業140社のうち、17社が証券取引所に上場しているとのこと。このような優良企業の目利きを持った方が運営しているとなれば、必然的に期待も高まりますね。
ただし、募集企業はそれほど多くないので初めて株式型クラウドファンディングを行う投資家にとってはハードルが高いと言えるでしょう。
エメラダ・エクイティ

そして最後に紹介するのは、国内3社目の株式型クラウドファンディング運営会社であるエメラダ・エクイティです。
エメラダ・エクイティでは、すでにプロの投資家が目利きをして出資したベンチャー企業が投資対象となります。これにより個人投資家がプロの投資家に「相乗り」する形で投資ができ、将来性の高い企業を選ぶことが可能という利点があるのが特徴です。
同時に、出資した企業が上場、もしくはM&Aの際に株式の交付を受けることができる「エメラダ型新株予約権」という独自のスキームを採用しています。
これは将来受け取ることができる株式数を最初から決めるのではなく、転換価額に基づいて将来的に株式数を決めることで、最終的に投資家が得られるリターンをより妥当な価格に近付けるため。
このエメラダ型新株予約権を利用すれば投資家だけでなく企業にとってもメリットが高いので、より有望なスタートアップ企業が集まると考えられるでしょう。
エメラダ・エクイティは2017年11月に運営を開始した新しい会社ですが、日経トレンディネット「2018年ヒット予想100」に選出されるなど注目度の高い運営会社となりそうですね。
今後の株式型クラウドファンディングはどうなる?
ここまでで株式型クラウドファンディング運営会社を紹介してきました。
株式型クラウドファンディングは、2017年度の市場規模が1,000億円を越え、今や国内だけで20社以上もある融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)に比べれば規模はまだまだ少ないと言わざるを得ません。
また未上場企業への投資ということでリスクが非常に高いと説明しましたが、その性質から一般の投資家にはハードルが高く、審査に落ちてしまう方も少なくないようです。
しかし、2018年3月31日には非上場企業の株式を売買するグリーンシート銘柄が廃止されます。このため、グリーンシート銘柄に代わる株式型クラウドファンディングに注目が集まる可能性も考えられるでしょう。
株式型クラウドファンディングに興味がある方は、ひとまず投資家登録を行ってみるのが良いかもしれませんね。
寄付をするくらいの大らかな気持ちで投資する

ここまで見てきたように、株式型クラウドファンディングは、ベンチャー企業にとって新たな資金調達方法として有望なものになるでしょう。
また、投資家にとっても、今まで手を出しづらかったベンチャー企業への投資がより身近になるとも言えます。
しかし、リスクの点だけはきちんと押さえておく必要があります。あくまでベンチャー企業への投資ですので十分に注意してください。感覚としては、「投資」というより、未来を変える可能性のあるベンチャー企業に「寄付」をするという感覚のほうがいいかもしれません。
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